Emptiness Play — JA

Emptiness Playは、プレイによって音と光が生成されるMRマルチプレイ体験であり、「創造とは何か」「創造する主体は本当に存在するのか」という問いを探求する公開実験である。


複数の参加者が物理空間に立ちながら、MRデバイスを通じて仮想オブジェクトを生成・共有し、即興的に相互作用する。参加者がトリガーやボタンを操作するたびに、さまざまな性質を持つオブジェクトが空間に生成される。生成されたオブジェクトは落下し、バウンドし、あるいは宙に浮いたまま、身体や空間の表面、他のオブジェクトと衝突し、音を発し、光を明滅させる。オブジェクトは時間とともに消滅し、あるいは参加者自身の手によって消去される。重力の向きや物理的挙動、音響は、参加者の操作や確率的アルゴリズムによって変調され、参加者は結果を完全にはコントロールできない。操作と結果の間にはズレが残り、そのズレが偶然性を生み、予期せぬ共鳴を引き起こす。明確な目標は与えられず、参加者たちは音と光の可能性を探索しながら、即興的に協働する。


本作の思想的基盤には、仏教の「空」の発想がある。ここでいう空とは、あらゆる現象が固有の本質を持つのではなく、条件の関係によって一時的に立ち上がるという捉え方である。創造行為もまた、作者個人の内側から単独で湧き出るものではなく、身体・環境・システム・他者との相互作用のなかで生起する出来事として捉え直される。本作はこの認識をインタラクティブシステムの振る舞いとして翻訳し、思想を読むのではなく、身体の知覚を通して経験されるものとして提示することを試みる。


本作の構造は、プレイと世界の自己相似性を露わにする。参加者の操作によって多様な現象が生まれる一方で、その生成は確率と制約の枠組みのなかで起きているにすぎない。人間の創造行為もまた、物理法則や認知、環境、他者との関係のもとで成立する、条件付きの自由である。参加者が、自らの創造もまたシステム内の出来事として生じていると気づくとき、「自分が創造している」という前提そのものが揺らぎはじめる。


本作は、勝敗や明確な目標を持たないアートゲームとして設計されている。同時に、MRパフォーマンスとしても展開される。コンテンポラリーダンサーのbundaiと中川鈴音は、MRデバイスを通じてオブジェクトを生成・操作する。音と光を生み出すプレイの中で、その身体運動が踊りへと変容し、創造が生まれるのかを問う。公演の終盤には、観客自身がMR空間に参入する体験セッションを設け、観る者と生成する者の境界を揺るがす。


本作はMeta Quest 3のパススルーMR上に構築されている。Photon Fusion 2とMeta Shared Spatial Anchorsにより空間共有を実現し、確率的な音響・視覚生成アルゴリズムが参加者の入力に応答する。プロトタイプはすでに実装済みであり、2026年前半に最初の公開実験を予定している。各実験の記録と参加者の反応をもとに、システムは継続的に更新される。

制作: Eguo
コンテンポラリーダンス: bundai, 中川鈴音

Eguo:
東京出身のメディアアーティスト。自作の電子音楽と映像を融合させたオーディオビジュアル表現を軸に、Boiler Room(Video bouillon名義)などでのライブパフォーマンスや、ビデオ作品、ビデオゲーム作品、XR作品などを多数制作。近年は主にVR/MR/ARを用いた身体的なオーディオビジュアル表現やビデオゲーム表現、インタラクティブ表現を探求し、作品に「多角視点」「メタ視点」「ブラックユーモア視点」を織り込んでいる。XR作品では、NEWVIEW AWARDS 2021でPARCO Prize、アジアデジタルアート大賞展 FUKUOKA 2024インタラクティブ・アート部門で入賞、 東京ゲームショウ2025 SELECTED INDIE 80に選出。

bundai:
トランスエイジャー。読むこと歩くこと瞑想や呼吸、睡眠を生業に、様々な存在に突き動かされ、動いたり動けなかったり。踊ったり踊れなかったり。

中川鈴音:
1999年生まれ、滋賀県出身。
お茶の水女子大学 芸術・表現行動学科 舞踊教育学コース卒業。
出演や個人での活動のほか、衣裳作家の平野みなみと共同制作を行う[Humpit]、地下空間Theater, Sweet Theaterを構えて活動するダンスカンパニー[Reconu]としての活動も行う。

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